2011 年 22 巻 2 号 p. 75-81
大うつ病性障害(MDD)・双極性障害(BD)の病態生理について,近赤外線スペクトロスコピィ(NIRS),脳磁図(MEG)を用いて検討を行った。NIRS による言語流暢性課題の検討では, MDD群では前頭葉の賦活がHC群より低下しており,BD群では賦活が遅延していた。会話課題では大うつ病性障害では前頭部の賦活の低下が目立ち,双極性障害では発話相/聴取相に伴うリズミカルな変化が認められなかった。MEG による mismatch field(MMNm)の検討では,MMNm振幅はMDD・BD群ともにHC群より小さく,MMNm潜時はBD群で延長していた。 このことから,MDD群では前頭前野の反応性が低下し,一方BD群は,前頭前野の血流反応性の大きさは保たれるが,反応が遅延することが示唆された。これらの変化の背景に自動的注意のレベルでの変化の存在が示唆されるが,さらなる検討が必要である。