developmental origins of health and disease(DOHaD)仮説は,「胎児期から生後早期の生育環境が,将来の疾病リスクに影響を与える」という概念であり,代謝性疾患との関連が広く知られている。近年,神経精神疾患においても胎児期環境の影響が注目され,疫学研究ではオランダの冬の大飢饉(1944〜1945)などを背景に,妊娠期低栄養が子の統合失調症リスクを上昇させる可能性が示唆されている。本稿では,妊娠期低栄養と統合失調症の関連について疫学的知見を概説し,さらに妊娠期低栄養動物モデルを用いた脳発達研究を整理する。最後に,妊娠初期母体低栄養モデルを用いた筆者らの最近の研究を紹介し,統合失調症の病態理解と予防・介入戦略への展望を述べる。
うつ病は異質性の高い症候群であり,現在の診断は問診に基づく症候学的評価に依存しており,病態を直接反映する客観的な生物学的検査法は確立していない。機能的磁気共鳴画像法(functional magnetic resonance imaging:fMRI)は非侵襲的に脳機能を評価できることから,精神疾患の病態研究に広く用いられてきた。近年では,課題を課さずに実施できる安静時fMRIが注目され,撮像の簡便性や臨床応用の観点から,うつ病の客観的診断支援や層別化をめざした研究が進んでいる。再現性の高い診断脳回路マーカーに加えて,治療反応性と関連する層別化脳回路マーカーの開発も進められており,個別化医療への応用が期待されている。本稿では,安静時fMRIの基礎を整理したうえで,うつ病で報告されている脳機能異常に関する知見を概説し,診断支援および層別化の臨床応用に向けた取り組みと課題を述べる。