疲労は脳で感じ,また,疲労によるパフォーマンスの低下にも脳が深く関わっている。ここでは,過剰な中枢神経活動をラットに負荷した中枢疲労モデルと,ウイルスの擬似感染モデルラットを用いた感染・免疫疲労モデルを取り上げ,中枢疲労時の睡眠誘導や脳内神経炎症による疲労・抑うつ行動の誘発に関わる分子・神経メカニズムについて紹介する。過剰な中枢神経活動はニューロンでのCOX2発現を惹起し,プロスタグランディンの産生亢進によって徐波睡眠を誘導すること,さらに,神経・グリア前駆細胞の増殖・分化調節によって組織再編を促進することがわかってきた。一方,ウイルス感染時には脳内でIL-1βが産生され,疲労・抑うつ行動が発現すること,さらに脳内IL-1 受容体アンタゴニスト産生が疲労・抑うつ行動からの回復に重要であることがわかってきた。