日本生物学的精神医学会誌
Online ISSN : 2186-6465
Print ISSN : 2186-6619
統合失調症におけるトランスレータブル脳指標としてのガンマ帯域オシレーションとノンレム睡眠スピンドル波
三輪 秀樹平野 羊嗣
著者情報
ジャーナル オープンアクセス

2020 年 31 巻 4 号 p. 190-

詳細
抄録

統合失調症を含む精神疾患の病態生理学的解析および創薬は未だ発展途上である。「精神」を研究対象とする精神疾患研究において,実験動物とヒトとでは多くの差異があることを改めて認識し,研究の方向性を検討し直さなければいけない時期なのかもしれない。米国・国立精神保健研究所は,精神疾患を理解し治療するために,Research Domain Criteria(RDoC)という新たな研究の枠組みを提案している。このRDoCは,カテゴリー別の診断体系というより,遺伝子,分子,細胞,神経回路,行動,生理,自己報告などのさまざまな階層の情報を統合し,それらとヒトの行動および精神障害による異常行動とを照合する試みである。本稿では,統合失調症を「神経回路疾患」という視点で捉え直し,機能障害が想定される神経回路を評価する神経生理学的指標として,近年着目されている聴性定常反応時のガンマ帯域オシレーションとノンレム睡眠スピンドル波を紹介する。これらの指標は,マウスなどの実験動物と臨床研究との橋渡しをするトランスレータブル指標の共通の言語の1つとして,精神疾患の病態生理学的解析および創薬開発に活用されることが期待される。

著者関連情報
© 2020 日本生物学的精神医学会
前の記事
feedback
Top