2024 年 35 巻 1 号 p. 36-39
せん妄に対する介入法は,エビデンス水準の高さからは非薬物的介入が先行しているが,せん妄は明瞭に生物学的基盤をもつ病態であるため,非薬物的介入に限界があるのも事実である。薬物療法による介入のエビデンスは徐々に蓄積されつつあり,治療では抗精神病薬,予防ではメラトニン神経伝達やオレキシン神経伝達へのアプローチが挙げられる。せん妄は生命予後不良の兆候であり,転倒転落や認知症発症のリスクを上昇させ,医療経済的な負担を増大させることから,その予防の重要性がますます認識される時代にある。薬物療法による介入もその方向に展開することが社会の要請であり,進展するせん妄の病態機序仮説に添った方略の展開が求められていくであろう。