日本生物学的精神医学会誌
Online ISSN : 2186-6465
Print ISSN : 2186-6619
統合失調症患者死後脳での細胞種特異的遺伝子発現解析
文東 美紀岩本 和也
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ジャーナル オープンアクセス

2026 年 37 巻 1 号 p. 2-5

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抄録
統合失調症は,陽性症状,陰性症状,認知機能障害などを主症状とする精神疾患であるが,病因の多くは未解明である。筆者らは死後脳試料から細胞核を精製しフローサイトメトリーにより細胞種を分画する技術を確立し,ゲノム科学研究に適用してきた。本研究では,新たに確立した5細胞種分画技術を,統合失調症患者死後脳前頭葉皮質に適用し,RNA発現解析を行った。その結果,検出された発現変動遺伝子は,すべての細胞種画分において,統合失調症患者で発現低下を示すものが多数を占めていた。発現変動遺伝子のgene ontology解析では,活性型マイクログリアで免疫反応や分泌小胞関連タームが,パスウェイ解析では,ニューロンで神経伝達物質や小胞輸送にかかわるパスウェイが検出された。さらに,GSEAではニューロンにおいて,統合失調症患者で発現上昇している遺伝子群に自閉スペクトラム症関連遺伝子が濃縮する傾向が認められた。これらの結果は,既報の大規模シングルセル解析とも一部整合しており,細胞種特異的な発現変動が統合失調症の病態に関与する可能性を示唆するものである。
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