2019 年 60 巻 1 号 p. 124-136
目的:特別支援教育に関する校内支援体制については,これまで様々な調査が行われてきたが,いずれも支援の実施率の報告に留まっている。そこで,本研究では,特別支援教育に関する校内支援体制の現状について,児童生徒のニーズに適した指導,支援が実現しているかという観点から検討するため,医療関係者を対象としたアンケート調査を行った。方法:関東在住の医師871名と言語聴覚士(以下,ST)384名の計1255名に質問紙を郵送し,医師283名,ST 122名から回答を得た(回収率32%)。
結果:「通常の学級での指導や環境は発達障害または発達障害的個性を持つ児童生徒に適していると思う」とする医療関係者は23%に留まった。配慮が必要な児童生徒が必要な特別支援教育を受けられない原因としては,「教員の特別支援教育への理解の不足(72%)」や「通級指導教室等の数の不足(71%)」が挙げられた。医師の71%に(しばしばある24%,まれにある47%)発達障害とは言えないとしていた子どもを発達障害と診断するようになった経験があり,58%(しばしばある15%,まれにある43%)が,発達障害としていた子どもを障害と診断しなくなった経験をしていた。
考察:特別支援教育には未だ課題が多く,環境整備のほか,教員の理解啓発が必要と考えられた。頻度は高くないが,医師の多くが発達障害の診断をのちに修正した経験を有していた。課題の現れ方が年月とともに変化することを教員は認識し,変化に応じた支援を行う必要がある。