臨床化学
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乳び胸の簡便な早期診断法
戸塚 実太田 浩良日高 宏哉奥村 伸生降旗 謙一勝山 努
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1995 年 24 巻 2 号 p. 101-105

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抄録

乳び胸の早期診断に胸水および血清の脂質 (トリグリセリド, エステル型コレステロール, 遊離型コレステロール, リン脂質) 濃度を測定し, それぞれの比を利用することが有用であった。すなわち, トリグリセリドの濃度比だけが他の脂質の濃度比より大きい場合を乳び胸水と判定することができる。この方法によって, 胸水中トリグリセリドが280 mg/lで, リボ蛋白電気泳動でカイロミクロンが検出されなかった症例において, 胸水/ 血清のトリグリセリド比, エステル型コレステロール比, 遊離型コレステロール比, リン脂質比は, それぞれ0.64, 0回46, 0.47, 0.46と乳び胸を疑わせる結果が得られた。2日後に同症例の胸水のリボ蛋白電気泳動においてカイロミクロンが証明され, 脂質濃度比もそれぞれ1.02, 0.46, 0.45, 0.48と胸水中トリグリセリドの割合だけが増大し, しかも血清トリグリセリド値を上回っており, 明らかに乳び胸と診断された。また胸水中トリグリセリド値が390mg/1で乳び胸でない症例や, それとほぼ同等の380mg/1で乳び胸であった症例もあり, トリグリセリドの絶対値による乳び胸の診断が必ずしも可能でないことから, 本法が乳び胸の早期診断に有効であることが示唆された。

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© 日本臨床化学会
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