臨床化学
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硫酸亜鉛混濁反応(ZTT)試薬組成の検討
Hill Climbing Approachを用いて
稲田 政則金原 清子五十嵐 富三男
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1998 年 27 巻 4 号 p. 223-231

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抄録

硫酸亜鉛混濁試験 (ZTT, クンケル試験) の標準的操作法は, 比較的緩衝能の低い2.5mmol/l バルビタール緩衝液を用いているため, 開栓状態における炭酸ガス吸収に起因するpH変動などによって引き起こされる日差変動が深刻な問題となっていた。この問題を解決するために, 徳田らは多くの緩衝液を検討し, バルビタール緩衝液に替わってビス (2-ヒドロキシエチル) イミノトリス (ヒドロキシメチル) メタン (ビストリス) 緩衝液の使用を推奨した (臨床化学, 23:316-322, 1994)。ビストリス緩衝液により試薬の安定性は改善されたものの, 彼らの報告の中に示された標準的操作法との相関試験においては, 無視できない偏りが認められていた。継続的な臨床的有用性を確保するためには, 試薬処方条件の最適化が必要であった。そこで我々は, 標準的操作法とのデータ互換性の確保を第一に考慮し, ビストリス緩衝液を用いる新しいクンケル試薬の最適な処方条件を探索した。処方条件の適切さは, 既に標準的操作法とのデータ互換性が確保されているルチン法との相関試験における残差標準偏差Sy・xによって評価し, ヒューリスティックな探索手法であるHill Climbing Approachを用いてSy・xが最小となる処方条件を探索した。このSy・x最小化によって決定された処方条件は, 標準的操作法とのデータ互換性を確保することが確認された。またx-R 管理図は, この処方条件が2週間以上の試薬安定性を有することを示した。Hill Climbing Approachは, 相互作用の存在する反応系において, 試薬処方条件の最適化のために有用な方法であった。

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