抄録
第一報にて, 日本臨床化学会 (JSCC) 勧告法試案および欧州臨床検査標準化協議会 (ECCLS) 勧告法にてtetraisopropyl pyrophosphoramide (TIPA) 阻害後の残存活性が認められること, またその残存活性は, ヒト血清アルブミン (HSA) 濃度に比例することを報告した。今回, その原因解析のための検討を行なった。試案の試薬組成のうち基質のみ2, 3-dimethoxybenzoylthiocholine iodide (DMBT) からbenzoylthiocholine iodide (BZTC) に替えたところ, 残存活性は認められなかった。また試案へのsodium dodecylsulfate (SDS) 添加による蛋白変性試験において, 血清コリンエステラーゼ (CHE) 活性値は1/10程度に失活したが, TIPA阻害後の残存活性はSDS無添加の場合とほとんど変わらなかった。以上より, JSCC試案における残存活性の原因は, アルブミンによる基質DMBTの非酵素的水解である可能性が示唆された。またECCLS勧告法では, 十分な測定可能範囲が得られず, 比例定量性に問題を残した。一方, 生成チオコリンの検出系の評価実験から, 5, 5'-dithiobis (2-nitrobenzoate)(DTNB) より生成する5-thio 2-nitrobenzoate (TNB) は, 分子吸光係数がHSA濃度により変動するのに対し, 2, 2'-dipyridildisu-fide (2-PDS) より生成する2-thiopyridone (2-TP) はその影響を受けにくいことが確認された。