抄録
ラットにおける非臨床毒性試験の臨床化学値の基準範囲をきめることはきわめて難しい。その理由は, 1) ラットはヒトに比べ血液量が少なく, 採血は動物生体にかなりのストレスを与えること, 2) ラットの臨床化学値の測定にはヒト用試薬を使用しているが, 特異性や関連性がとれない場合があること, および3) 臨床化学検査値に統計学的有意差があっても組織病理学的検査で異常がなければ問題ない場合もある。そこで, 日本臨床化学会動物専門委員会加盟の9社より提供された1994年以降に実施されたラットを用いる毒性試験の無処置または陰性対照物質投与動物 (約5,000匹) の臨床化学検査値のデータベースを構築し, 測定時の各種条件の確認および基準範囲作成に影響を与える因子を解析した。本論文では, データベースの構築方法と概要を示し, さらに基準範囲作成に影響を与える技術的要因について文献的に考察した。個別項目の基準範囲については, シリーズの-環として分担執筆し, さらにアルブミンと測定試薬の関係についても別途報告する。