抄録
高トリグリセリド血症患者の血清検体のHDL-コレステロールを2種の直接法 (第一化学法・協和法) と超遠心法で測定し, 測定値を比較した。第一化学法は超遠心法とよく一致していた。協和法もほとんどの検体で超遠心法と一致したが, 4例において乖離が認められた。乖離検体をリポ蛋白電気泳動したところ, 低値に測定された1例はすでに乖離要因として知られているslowαHDLが存在する検体で, 高値に測定された3例はVLDLを多く含む検体であった。これらVLDLの増加した3例について超遠心法にてカイロミクロンとVLDLを除去した (LDL+HDL) 層を直接法で測定した結果, 第一化学法では原血清とほぼ一致したが, 協和法では原血清と比べ低値となり超遠心法や第一化学法と一致した。さらにゲル濾過クロマトグラフィー法でリポ蛋白を分画し, 直接法でVLDL画分を測定したところ, 協和法は有意に反応性を示したが, 第一化学法ではほとんど反応しなかった。乖離検体の4例の反応タイムコースは測定に影響を与えると思われるような異常なものではなかった。以上の結果より, 協和法はVLDLと反応性を示すために高VLDL血症では超遠心法より高値にでる可能性があることが示唆された。第一化学法はVLDLとの反応性がほとんどないと推定できた。