抄録
ALT (alanine aminotransferase) は古くから臨床検査に用いられている典型的な逸脱酵素であり, 肝障害などの指標として用いられている。今回われわれは血清中ALT活性が0U/I (測定限界以下) の症例についてALT遺伝子解析を行った。その結果, 一塩基置換 (2297C→A) があり, 351番目のアミノ酸Pro (CCG) がThr (ACG) に変化しているホモ接合体であることを同定した。この置換は健常者 (n=98) には認められず, RFLP (restriction fragment length polymorphism) 法によって遺伝子多型ではないことを確認した。血清中のALT蛋白質の有無をWestern Blot法により検索したところ, 健常者とほぼ同量のALT蛋白質が認められた。これらの結果より, 患者の血清中には活性を有さない機能異常の蛋白質が存在し, それは遺伝子の- 塩基置換に起因していることが示唆された。