抄録
細胞外情報をリガンドから受け取る仕組みの例としてチロシンキナーゼの役割、受容体からのシグナルを細胞質に伝える仕組みとしてのGTP結合タンパク質の役割、細胞増殖・分化・アポトーシスに重要な役目を果たすMAPキナーゼカスケードを例示し, シグナル伝達系の全体像を概説した。つぎにこれらシグナル伝達系異常と疾患の関連について触れた。さらに、細胞内で網の目のように複雑に連携するシグナル伝達を最終的に統合し、細胞応答への橋渡しの役割を担う転写調節機構の重要性を強調した。転写制御異常と疾患の関連について、われわれは、NF-κBと炎症、とくに全身性炎症性症候群発症におけるNF-κB過剰発現の関与と、癌細胞におけるNF-κB恒常的発現は抗アポトーシスの重要な分子機構であることを明らかにしたのでこれら研究を中心に紹介した。