臨床化学
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トランスサイレチンup-to-date
安東 由喜雄
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2008 年 37 巻 4 号 p. 375-382

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抄録

トランスサイレチン (TTR) は血中に約20~40mg/dl存在する半減期1.9日の血漿蛋白質の1つである。本蛋白質は髄液にも他の蛋白質と比較して高濃度血中に存在し, アルツハイマー病, うつ病, 鉛中毒などの中枢神経系の疾患にTTR代謝が重要な役割を及ぼしていると考えられている。レチノール結合蛋白, サイロキシンと結合し, 血中で4量体として機能する。トリプトファンを多く含む蛋白質の1つとして位置づけられており, 栄養指標として重要な蛋白であることから, 栄養サポートチーム (NST) にも活用されている。しかし, 本蛋白は反急性期蛋白で, 炎症や感染により, 血中濃度が影響を受けるので, その血中濃度を病態と関連づけるのは難しい側面もある。本蛋白質はβシート豊富な構造をもつことから遺伝的に変異したTTRは家族性アミロイドポリニューロパチー (FAP) の原因蛋白であることも知られているが, 最近正常のTTRも老人性アミロイドーシスの原因蛋白質となることが注目されている。血中の異型TTRは主として肝臓で産生されることから, FAP患者に対して肝移植が行われ, 効果を挙げている。TTRはこれに加え中枢神経系の様々な疾患や糖尿病, 脂質代謝などに重要な働きを示すことが明らかになってきた。

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