2005 年 2005 巻 804 号 p. 804_73-804_81
東京湾流域の82の下水処理場を対象に, 排出権取引制度を導入した場合の汚濁負荷削減費用の節約効果を推定した. COD, 全窒素, 全リンの3取引対象物質を, 一元的に統合して取引する手法と個別に取引する手法の2通りの条件を設定し, 各下水処理場の実績値を考慮した排出権の取引モデルを構築することで, 取引を認めない場合と取引を認める場合の汚濁負荷削減費用を比較した. シミュレーションの結果, 流域全体で27%程度の汚濁負荷削減費用の節約が排出権取引によって可能であることがわかった. 大規模処理場では高度処理を導入して排出権を売却する利益が, 小規模処理場では排出権を購入して高度処理を回避することによる節約がそれぞれ大きい.