抄録
多くの海岸では, 防潮堤が築かれることによって, 高潮などによる住民への直接的被害を防ぐことができるようになった. しかし, 一方では堤体や付帯施設工等による風環境の変化が後背地に生育する海岸林の成育を阻害する事例が各地で見られるようになった.
本研究は, 防潮堤の堤体構造の異なる位置や付帯施設工等に接する海岸林の林縁部において発生している成育阻害事例を地球観測衛星で観測された可視光~近赤外線波長域のリモートセンシングデータ (多重分光) から算定される植生指標を使って判読するとともに, その成育阻害の程度と当該個所における潮風の風速分布との因果関係を調査し, 土木工学的な防潮堤と海岸林に見る植生環境との相互関係を検討したものである.