1999 年 1999 巻 635 号 p. 127-139
鹿島灘砂浜海岸における現地観測と数値解析によって, 地下水経由の栄養塩輸送プロセスおよび海域への供給量に関する検討を行った. 現地観測結果から, 後背地起源の地下水中栄養塩濃度は海水と比較して極めて高く, 河川水中濃度と同程度であること, 窒素とリンは前浜周辺において著しい生化学作用を受けること, 海岸林直下において栄養塩濃度が低減することなどを示した. また, 飽和-不飽和浸透流方程式, 溶質の移流分散方程式を連立させ, さらに地下水位変動と潮位変動を考慮した数値解析手法によって地下水流量を同定し, 海域へ供給される栄養塩フラックスおよびその寄与を算出した. その結果, 鹿島灘海域全体への栄養塩供給には地下水と比較して利根川の影響が大きく, 砕波帯周辺海域では沖側水塊の影響が卓越していることを示した.