2000 年 2000 巻 640 号 p. 165-175
本研究では, 各種鋼材を対象に, 地震時に想定される10%を超える引張あるいは圧縮の塑性歪みを考慮し, CTOD試験により, 塑性歪み導入による破壊靭性の劣化について検討した. その結果, 塑性歪みにより全く脆化しない鋼材の存在が確認される一方で, それ以外の全ての種類の鋼材で, 歪み時効脆化する以前に, 塑性歪みそのものによって著しく脆化することが明らかとなった. その際, 塑性歪みによる脆化の程度は, 鋼材の種類によって大きく異なった. また, 圧縮予歪みの方が引張予歪みよりも鋼材をより脆化させる傾向があることが確認されたことから, その要因について, 材料特性面から検討を加えた.