抄録
近代的な水文観測体制が整備される前の時代 (歴史時代) の琵琶湖水位は, 膳所藩による定期観測記録や田面の冠水深記録等によりある程度定量的に推定される. また, 流域各地に散在する古日記からは日々の天気変化を知ることができる. 本研究では, 古日記の天候記録と迎水位・ピーク水位データを用いて歴史時代における洪水期の琵琶湖流域平均降雨量を逆算するモデルを構築し, 江戸時代後半期の主要洪水にこれを適用して洪水規模再現を試みた. さらに, 同モデルを近年洪水に適用し, 結果を観測データと比較することによりモデルの有効性を検証した. その結果, 本モデルは特に大規模洪水に対して再現性が高く, またピーク水位データの誤差が結果の信頼性に大きな影響を及ぼすことが確かめられた.