抄録
近年, 世界各国で感染症の流行を引き起こし問題視されている原虫やウイルス等の病原微生物は, 感染者の体内で増殖し糞便とともに高濃度で下水へ排出される. そのため, ある都市で発生した感染症の流行はその都市内にとどまらず, 様々な水利用システムを介して他の都市へ伝播する危険性を伴う. また, 増大し続ける水需要に呼応して水利用の効率化が進みつつある流域の現状は, この流行伝播の危険性を増加させる可能性があるため, 衛生学的観点からの流域管理が切望されている. 本論文では, 流域管理の目的から流域内二都市間における水系感染症の流行伝播モデルを開発し, 浄水・下水処理による病原微生物除去効率, 河川流量と微生物濃度等の因子が二都市間での感染症流行の伝播に与える影響を明らかにした.