土木学会論文集
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2000 巻, 664 号
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  • 越川 博元, 井上 直子, 大河内 由美子, 寺島 泰
    2000 年2000 巻664 号 p. 1-10
    発行日: 2000/11/22
    公開日: 2010/08/24
    ジャーナル フリー
    遺伝子組換え微生物の環境工学的利用の基礎としてこれに固定化法を適用し, 組換え微生物が産する脱ハロゲン化酵素の活性に対する効果について検討し次の結果を得た. アクリルアミドでは菌体を高濃度かつ安定して保持できた. 寒天およびポリアクリルアミドによる固定化では菌体1mgあたりの活性は大きく低下するものの, 本実験条件下ではpH8~10で, また反応温度についても固定化しなかった場合と比較してこれらの影響は受けにくくなる傾向が見られた. 活性の持続性については, 固定化した場合にはその活性が持続する期間が長くなった. 以上の結果から, 遺伝子組換え大腸菌に固定化法を適用することで遺伝子組換え大腸菌が有する活性のpH・温度・持続性に対する特性を改善することができるものと考えられた.
  • 松梨 史郎, 今村 正裕
    2000 年2000 巻664 号 p. 11-20
    発行日: 2000/11/22
    公開日: 2010/08/24
    ジャーナル フリー
    閉鎖性海域の水質問題や環境容量を考える上で, 富栄養化のしやすさ, 一旦富栄養化した場合の改善のしにくさ, 環境基準を維持するための許容負荷量の推定, 等の問題点が浮上してくる. 本研究では, まず全国の主な閉鎖性海域における湾の地形や滞留時間, 負荷量等の特性を比較した. 次に湾の平均水深と更新率の積と, 全窒素・全リンの表面積負荷量の関係図において, 全窒素・全リンの物質収支に基づく検討から環境基準濃度を維持するための負荷量曲線を描き, 各湾の富栄養化の特性の相違を比較検討するとともに富栄養化の可能性について検討した. さらに同図を用いて, 全窒素・全リンに関する許容負荷量の推定が可能であることを示した.
  • 八谷 陽一郎, 坂井 晃, 三浦 哲彦, 陶野 郁雄
    2000 年2000 巻664 号 p. 21-30
    発行日: 2000/11/22
    公開日: 2010/08/24
    ジャーナル フリー
    典型的な低平地環境を形成する佐賀平野においては, 従来から地下水の利用が盛んであったため, 地下水揚水に伴う地盤沈下や地下水の塩水化などの地盤環境に関する問題が生じている. 地盤環境を保全・管理していくためには, 健全な地下水環境を確保することが重要である. 近年, 天然の放射性物質, 環境同位体などの地下水環境を調査することにより, 地下水の履歴等に関する評価が可能となってきた. 本研究では, 地盤環境の管理に資することを目的として, 各種の溶存成分及び同位体に基づく地下水環境に関する調査を行うとともに, 佐賀平野の地下水循環等に関する考察を行った. その結果, 佐賀平野の地下水は, 三方を囲む山地部を起源として水平涵養され, 地下での滞留時間は山麓部では数10年, 有明海に近い平野部では最大103年程度にも及ぶことが明らかになった.
  • 木内 豪
    2000 年2000 巻664 号 p. 31-42
    発行日: 2000/11/22
    公開日: 2010/08/24
    ジャーナル フリー
    都市の屋外空間は人間の聴覚, 視覚, 嗅覚, 触覚に対して様々な剌激を与える複合的な環境条件にある. 本論文では, 水辺, 公園, 街路, 住宅地などの都市の屋外空間における快適性の支配構造を明らかにして複合的環境条件における快適性の評価手法を提案した. まず, 屋外空間の音環境, 視環境, 熱環境に, 大気環境を表す環境条件と心理反応の閲系について検討を行い, 各環境を代表する指標を明らかにした. 次に, これらの指標を入力層に持つニューラルネットワークを用いて快適感を推定する手法を構築し, 本手法により未学習データに対して精度の良い快適感推定ができることを確認した. また, ニューラルネットワークを用いて各環境条件と快適感の間の非線形的な関係を明らかにするとともに, 快適感への影響度合いの大きい順番は景色の美感, 体感温度, 天空率, 自然音指数, 芳香指数であることがわかった.
  • 上岡 誠一, 柏谷 衛
    2000 年2000 巻664 号 p. 43-54
    発行日: 2000/11/22
    公開日: 2010/08/24
    ジャーナル フリー
    高炉セメントB種とベントナイトの混合材 (CB混合材) 及び高炉セメントB種単体を用い, 深層機械撹拌工法でCr (VI) 汚染土壌を原位置不溶化処理する基礎研究を行った. この結果, Cr (VI) 吸着能力が高いCB混合材では, 硬化発現に伴うCr (VI) のセメントマトリックス中への封じ込め効果が低く, 材令経過に伴い溶出量が増加した. 高炉セメントB種単体ではセメントマトリックス中への封じ込め効果が高く, Cr (VI) 含有量50mg/kg (dly-base) の砂質土では200kg/m3, 有機質土では100kg/m3添加で土壌環境基準値を下回る溶出Cr (VI) 濃度となること, かつ粉体よりスラリー状で効果が高いことも確認された. 撹拌混合度の相違がCr (VI) 溶出量に及ぼす影響については, 混合度を明度値より求め, 汚染土壌に不溶化処理材が均質に行きわたる最適な不溶化処理は混合度の変動係数が2%を下回る撹拌混合が必要であることが判明した.
  • 木村 賢史, 鈴木 伸治, 西村 修, 稲森 悠平, 須藤 隆一
    2000 年2000 巻664 号 p. 55-63
    発行日: 2000/11/22
    公開日: 2010/08/24
    ジャーナル フリー
    葛西人工海浜は, 都民のレクレーションの場として広く親しまれている. 葛西人工海浜の底層水域環境は, DOや底質COD, 強熱減量, 全硫化物, 酸化還元電位いずれをとっても, 自然干潟である千葉県の盤洲干潟や三番瀬と遜色ない良好な値を維持している. しかし, 底生動物は質量ともに変動が大きく安定していない. この原因として, 葛西人工海浜は河川水の影響を受けやすい構造をしており, 河川水が降雨により増加した場合, 水質は低塩分化し, 底生動物の中でもアサリ, シオフキガイ, バカガイ, マテガイなどの低塩分に弱い二枚貝類に大きなダメージを与えることが推察された.
  • 船水 尚行, 高桑 哲男
    2000 年2000 巻664 号 p. 65-73
    発行日: 2000/11/22
    公開日: 2010/08/24
    ジャーナル フリー
    ディスポーザー排水をその処理性から評価するために, 浮遊物の沈降速度分布測定, 有機物の生物処理性からの分類, ディスポーザー汚泥と最初沈殿池汚泥の混合汚泥の濃縮に関する基礎実験を行った. その結果,・ディスポーザー排水中浮遊物の最初沈殿池における除去率は約65%~75%であること,・生物分解性から有機物を分類すると遅い速度で分解する有機物が約86%を占め, 容易に分解する有機物が約12%, 難生物分解溶解性有機物が約3%, 難生物分解浮遊性有機物はほとんど存在しないこと,・混合汚泥の沈降フラックスはディスポーザー排水中浮遊物の混合割合に比例して増加すること,・混合汚泥の濃縮過程における反応性は現状の最初沈殿池汚泥と大差ないこと, が示された.
  • 渡部 徹, 大村 達夫
    2000 年2000 巻664 号 p. 75-83
    発行日: 2000/11/22
    公開日: 2010/08/24
    ジャーナル フリー
    近年, 世界各国で感染症の流行を引き起こし問題視されている原虫やウイルス等の病原微生物は, 感染者の体内で増殖し糞便とともに高濃度で下水へ排出される. そのため, ある都市で発生した感染症の流行はその都市内にとどまらず, 様々な水利用システムを介して他の都市へ伝播する危険性を伴う. また, 増大し続ける水需要に呼応して水利用の効率化が進みつつある流域の現状は, この流行伝播の危険性を増加させる可能性があるため, 衛生学的観点からの流域管理が切望されている. 本論文では, 流域管理の目的から流域内二都市間における水系感染症の流行伝播モデルを開発し, 浄水・下水処理による病原微生物除去効率, 河川流量と微生物濃度等の因子が二都市間での感染症流行の伝播に与える影響を明らかにした.
  • Jugal BHURTEL, 樋口 隆哉, 浮田 正夫
    2000 年2000 巻664 号 p. 85-95
    発行日: 2000/11/22
    公開日: 2010/08/24
    ジャーナル フリー
    本研究では自由水面型人工湿地の総合的モデル化を行った. モデル化においては湿地における拡散流れを想定し, 有機物除去に対する水相の浮遊生物群および表面に付着した生物膜の寄与を考慮した. 動力学的特性値, 拡散に関与する特性値, 生物膜の厚さや密度などのパラメータは実験的に求めた. その結果, 付着生物群が果たす役割の重要性が明らかになった. またパイロットプラントのデータを用いてモデルの検証を行い, 既存の押し出し流れモデルと比較して人工湿地の設計に適用が可能であることが示された.
  • Md. Rezaul KARIM, ABM BADRUZZAMAN, 関根 雅彦, 浮田 正夫
    2000 年2000 巻664 号 p. 97-107
    発行日: 2000/11/22
    公開日: 2010/08/24
    ジャーナル フリー
    1995年と1996年の1月から4月にかけて, バングラデシュの一河川を対象として水質に関する広範な野外モニタリングおよび室内分析を行った. さらに, 一次元水質モデルを開発し, 得られたデータを用いて校正と検証を行い, 低水時における河川の汚染状況と環境容量を定量化した. その結果, 河川水のDOは危険レベルである4mg/Lを上回り, 魚類を含む水生生物の生存には問題のないことが明らかになった. また, 河川は十分な環境容量を持ち, 将来の産業立地による汚染物質の負荷に対してもDOの基準を維持できることが示された.
  • Truong Hong TIEN, Mehdi BETTAHAR, 熊谷 慎祐
    2000 年2000 巻664 号 p. 109-117
    発行日: 2000/11/22
    公開日: 2010/08/24
    ジャーナル フリー
    本研究では, 汚染土壌修復のために調製した界面活性剤溶液の最適塩濃度 (S) 及び水-油界面張力 (γmin) の最小値に及ぼす油分率の影響について検討した. その結果, 最適塩濃度と界面張力の最小値は, 油分率の変化に伴い変化することが確認された. 又, この結果がカラム実験の結果と一致していることを確認した. カラム中の油分率を考慮して調製した界面活性剤溶液が最も高い回収率を示した. この油分率の変化に伴う最適塩濃度の変化は, 油分率係数 (ka) によって表される. しかしながら, この変化は, 最適塩濃度と界面張力の最小値との関係に影響しないことが前報の中で確認された. 以上の結果から, 汚染土壌修復のために最適な界面活性剤溶液を調製するための有用な指標を提供した.
  • 大野 博之
    2000 年2000 巻664 号 p. 119-126
    発行日: 2000/11/22
    公開日: 2010/08/24
    ジャーナル フリー
    河川法の改正等にみられるように, 近年, 土木事業においても自然環境を保全・創出することが求められるようになり, 自然環境に配慮した砂防事業や河川事業が実施されるようになってきた. しかしながら, 実際に出来上がった施設が, 周辺の自然と調和するかどうかの客観的な評価法がほとんどなく, 設計者や施工者などの自然観による主観的な評価で実施されているのが現状である.
    本研究では, 自然物の分布様式に見られるフラクタル性を基に, 自然環境の客観的かつ定量的な評価を試みた. その結果, フラクタル特性を基にして, 自然と人工物の区別が定量的にできる可能性を示した. また, 植生分布の変化状況もフラクタル次元と分布面積でより定量的に評価できることが示された.
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