抄録
瀬戸内海等の静穏な海域に存在する傾斜の緩やかな砂浜を対象とし, 漂着油の砂浜への土壌浸透とその漂着油が溶存態及び懸濁態物質の土壌中への浸透に及ぼす影響を明らかにすることを目的として, モデル砂浜を用いた実験を行った. 原油とC重油の浸透実験を行った結果, 浸透した原油の72%が, C重油の98%が土壌表面から2cmの部分に存在していることが確かめられた. この油の存在によって, 溶存態物質の浸透量が低下し, 懸濁態物質の浸透が阻害されることが確かめられた. 以上のことは, 砂浜の底生生物の生存に不可欠である溶存酸素, 栄養塩, 有機物のような溶存態物質と細菌, 植物プランクトン, シルトのような懸濁態物質の土壌中への浸透が油の漂着によって阻害され, 底生生物に多大な影響を及ぼすと推測された.