2001 年 2001 巻 682 号 p. 129-142
地震後早期に被害状況を把握することは, 緊急対応を迅速・正確に行うための要件である. 従って, 被害の全貌の概略を即時推定して初動体制を確立するとともに, 確認情報を取り込んで推定結果を更新して精度の向上を図り, 意思決定に役立てることが重要である. 本研究では, この問題にベイズ確率の方法が有用であることに着目し, 部分的な実被害情報を用いて全体の被害箇所数を逐次推定する方法を示す. また, 被害推定・被害情報・対応行動の三者を関連付けるルールを明確にするため, 被害発生率の逐次確率比検定に基づく逐次決定過程のモデル化を行う. 仮想的なシステムや, 岐阜市を対象とした逐次推定過程のシミュレーシヨンのケーススタディーを示し, 緊急対応の意思決定におよぼす様々な要因について検討する.