土木学会論文集
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2001 巻, 682 号
選択された号の論文の36件中1~36を表示しています
  • 許 斌, 呉 智深, 横山 功一, 原田 隆郎
    2001 年 2001 巻 682 号 p. 1-13
    発行日: 2001/07/21
    公開日: 2010/08/24
    ジャーナル フリー
    地震時における安全性の向上を目的とした構造物のアクティブ振動制御に関する研究とその実用化が大いに期待されている. 本論文では, 階層型ニューラルネットワークを用いて, アクチュエータの動力特性を生かした構造-アクチュエータ連成システム構築し, 構造システムの局所化同定及び局所化制御領域の応答値の予測, 更に実現可能な局所化制御信号計算方法等の問題について検討した. そして, 大型で複雑な制御対象にも適用できるように, 局所化システムの情報によって適切な制御信号を出せるような制御システムに発展させた. 数値シミュレーションの結果, 状態予測および制御信号の算定において精度の高い結果が得られ, システムの有効性とロバストな適応制御アルゴリズムが確認できた.
  • Jeffrey THOMURE, John BOLANDER, 国枝 稔
    2001 年 2001 巻 682 号 p. 15-23
    発行日: 2001/07/21
    公開日: 2010/08/24
    ジャーナル フリー
    格子モデルを用いる解析においては, 個々のラティス要素の特性が評価される. 各ラティス要素はその配置に依存した方向性を有し, 見かけの強度や靭性にばらつきを生じさせ, 部材全体の挙動にも影響を及ぼす. 本論文では, 分布ひび割れモデルに基づいた Rigid-Body-Spring Network を提案し, 均質材料としてのコンクリートのひび割れ進展解析 (モードI) を行い, 実験結果との比較検討を行った. その中で, ヴォロノイ分割による離散化手法を用いた場合でも, セルの大きさや形状に依存することなく, ひび割れの発生による局所的な消散エネルギーが一定となることも示した.
  • 小長井 一男, Jörgen JOHANSSON
    2001 年 2001 巻 682 号 p. 25-30
    発行日: 2001/07/21
    公開日: 2010/08/24
    ジャーナル フリー
    地盤の大変形解析のためのLPFDM (ラグランジアン・ポイント有限差分法) を提示した. これは有限差分法のスキームでの時刻暦解析法で, 全体マトリックスを構築する必要がない. 解析対象となる物質はラグランジアン・ポイントと呼ばれる点の集合で表現される. 1回のタイムステップで更新されたラグランシアン パラメータ (点の座標値なども含む) はバックグランドである Euler 座標上にマッピングされ, 次のステップの計算に移行する. したがって, 本手法は Sulsky らが開発したラグランジアン・ポイント法 (LPM) にFLACなどと共通する有限差分法のスキームを反映したもので, 両者の特徴を反映し, 大変形解析を, 少ない計算負荷で行うことを可能にする.
  • 高田 至郎, 北田 敬広
    2001 年 2001 巻 682 号 p. 31-40
    発行日: 2001/07/21
    公開日: 2010/08/24
    ジャーナル フリー
    従来の地震被害予測手法は膨大なデータの収集・評価値を算出する過程における様々な予測式の活用など, 多数の不確定要因の問題や多くの労力を要する. そのため従来の予測手法に替わり, できる限り簡便に地震災害危険度評価を行うことが可能な手法を考案することは意義のある試みと考えられる. 本研究では従来手法での被害想定調査で得られたデータをもとに簡便な地域地震診断表の作成ならびにその評価を行う.
  • 米田 慶太, 川島 一彦, 庄司 学
    2001 年 2001 巻 682 号 p. 41-56
    発行日: 2001/07/21
    公開日: 2010/08/24
    ジャーナル フリー
    既設鉄筋コンクリート橋脚に対するせん断耐力やじん性向上を目的として, 炭素繊維シートを用いた耐震補強法がその施工性の良さから注目されている. これまでの研究の多くはせん断耐力の向上や矩形断面橋脚を対象としたじん性の向上を目的としており, 円形断面橋脚を対象としてじん性の向上を目的とした研究が少ないことから, 本研究では炭素繊維シートを周方向に巻き付けて横拘束を与えた円形断面鉄筋コンクリート橋脚に対する繰り返し載荷実験を行った. また, 道路橋示方書の地震時保有水平耐力法に基づき炭素繊維シートで横拘束したコンクリートの応力度~ひずみ関係を採用して曲げ耐力および終局変位について解析を行った.
  • 剱持 安伸, 川島 一彦
    2001 年 2001 巻 682 号 p. 57-69
    発行日: 2001/07/21
    公開日: 2010/08/24
    ジャーナル フリー
    従来の中空断面RC高橋脚では, 内部拘束を高め, せん断に抵抗するために多量に帯鉄筋を配置する必要があり, 組立てが複雑となる. このため, 施工性を改善し, かつ在来構造と同等以上の耐震性を保有する新しい高橋脚構造形式の開発の重要性が高まってきている. 本研究では, スパイラル筋によって部分的に強く拘束したコアを数個作り, このまわりは普通の帯鉄筋により拘束するという中空断面RC橋脚 (DASC橋脚) を提案し, 模型を用いたくり返し載荷実験に基づいて, この耐震性を在来形式橋脚との比較に重点を置いて検証した.
  • 森地 重暉, 川名 太, 仲澤 弦大, 白戸 義孝
    2001 年 2001 巻 682 号 p. 71-80
    発行日: 2001/07/21
    公開日: 2010/08/24
    ジャーナル フリー
    不整形地盤に生ずる波動現象を究明するための一手法としての模型実験法の開発を試みた. 地盤模型材料としてアクリルアミドゲルを選定した. この材料は他の模型材料に比べて著しく低い横波速度をもつので, それを活用して実験の実施を容易にした. 本文では, 次の例題を用いた. 剛基層上に, 一層地盤と二層地盤が連結された不整形部をもつ地盤模型を作成し, 下方よりSH波状の平面波を入射して模型内に生ずる波動現象を調べた. その結果 (1) 二層地盤部に水平方向を伝播する Love 波状の波を確認したこと, (2) 不整形部では, 実体波の影響が強いこと等を把握したことで, 本方法の有効性を示すことができた.
  • 庄司 学, 川島 一彦, 斎藤 淳
    2001 年 2001 巻 682 号 p. 81-100
    発行日: 2001/07/21
    公開日: 2010/08/24
    ジャーナル フリー
    現在の橋の免震設計では, 上部構造の応答変位が大きくなり過ぎないように, 免震橋の固有周期は免震支承を用いない場合の固有周期の2倍程度に抑えられている. このため, 免震橋の固有周期と地震動の卓越周期を十分に分離することができない場合があり, この場合には免震支承のみならず橋脚にも塑性化が生じ得る. 免震支承と橋脚がともに塑性化する場合の免震橋の耐震性能については解析的・実験的に従来ほとんど検討されていないのが実状であり, 早急な検討が求められている. ここでは, 降伏耐力の異なる2タイプのRC橋脚に対して高減衰積層ゴム支承を設置し, 繰り返し載荷実験によって免震支承と橋脚がともに塑性化する場合の免震橋の耐震性能について検討した.
  • 濱田 純次, 菅野 高弘, 上部 達生, 上田 茂, 横田 弘
    2001 年 2001 巻 682 号 p. 101-113
    発行日: 2001/07/21
    公開日: 2010/08/24
    ジャーナル フリー
    斜杭式桟橋の模型振動実験を実施し, 地震時の上部工の応答特性, 杭断面力に対する地盤変位の影響について検討した. 模型製作にあたっては, 杭の軸剛性と曲げ剛性, 地盤剛性に関して相似性を持たせ, 実験は4種類の異なる地盤と2種類の異なる上載荷重条件で行った. その結果, 斜杭式桟橋は, 基盤からの入力が支配的であり, 直杭式桟橋と異なった振動特性を示した. 斜杭に発生する軸力は, 上部工の応答により決定し, 地盤の動きは, 杭頭曲げモーメントに大きく影響を及ぼした.
  • 渡邊 学歩, 川島 一彦
    2001 年 2001 巻 682 号 p. 115-128
    発行日: 2001/07/21
    公開日: 2010/08/24
    ジャーナル フリー
    地震時保有耐力法のように, 橋脚の非線形領域における変形を考慮した耐震設計法では, 弾性応答から求められる地震力を荷重低減係数で除して弾塑性系に要求される耐力を設定する. この際, 荷重低減係数はエネルギー一定則や変位一定則などの経験則に基づいて設定するのが一般的である. しかし, 弾性系および弾塑性系の応答値の比によって定義される荷重低減係数は, 固有周期, 変位じん性率, 地盤種別などによって複雑に変化する. じん性設計において, 非線形応答を単純かつ精度よく推定することが重要であることから, 本研究では荷重低減係数の特性について考察するとともに, 新しい荷重低減係数の定式化を提案する.
  • 能島 暢呂, 杉戸 真太, 金澤 伸治
    2001 年 2001 巻 682 号 p. 129-142
    発行日: 2001/07/21
    公開日: 2010/08/24
    ジャーナル フリー
    地震後早期に被害状況を把握することは, 緊急対応を迅速・正確に行うための要件である. 従って, 被害の全貌の概略を即時推定して初動体制を確立するとともに, 確認情報を取り込んで推定結果を更新して精度の向上を図り, 意思決定に役立てることが重要である. 本研究では, この問題にベイズ確率の方法が有用であることに着目し, 部分的な実被害情報を用いて全体の被害箇所数を逐次推定する方法を示す. また, 被害推定・被害情報・対応行動の三者を関連付けるルールを明確にするため, 被害発生率の逐次確率比検定に基づく逐次決定過程のモデル化を行う. 仮想的なシステムや, 岐阜市を対象とした逐次推定過程のシミュレーシヨンのケーススタディーを示し, 緊急対応の意思決定におよぼす様々な要因について検討する.
  • 三浦 房紀, 朱 媛媛
    2001 年 2001 巻 682 号 p. 143-153
    発行日: 2001/07/21
    公開日: 2010/08/24
    ジャーナル フリー
    液状化により側方移動を生じた地盤内にある杭は, 地盤による強制的な変位と地盤の軟化によって, その安定性が大きく低下することが予想される. この種の問題を解くには, 地盤の材料非線形性のみならず, 杭の大変位を扱う必要があり, 幾何学的非線形性を考慮に入れた解析が必要となる. そこで本論文はその第一歩として, 杭先端および杭頭の境界条件が両端ヒンジ, 杭先端ヒンジー杭頭固定の場合について非線形の微分方程式を導き, その座屈荷重に及ぼす地盤の側方変位量の影響, さらに液状化の影響を地盤バネの低下で表すことによってその影響も調べた. その結果, 地盤の側方変位は座屈荷重にはほとんど影響を及ぼさないこと, 逆に地盤バネの低下は極めて大きな影響を及ぼすことが明らかになった.
  • 三浦 房紀, 朱 媛媛
    2001 年 2001 巻 682 号 p. 155-164
    発行日: 2001/07/21
    公開日: 2010/08/24
    ジャーナル フリー
    液状化により側方移動を生じた地盤内にある杭は, 地盤による強制的な変位と地盤の軟化によって, その安定性が大きく低下することが予想される. そこで筆者らは杭の大変位に伴う幾何学的非線形性を考慮に入れて, 杭頭ヒンジの場合を対象にその座屈荷重に関して検討を行ってきた. 本論文はその手法を発展させ, 杭頭フリーの場合について非線形の微分方程式を導き, その座屈荷重を求めたものである. 杭の座屈荷重におよぼす地盤の側方変位量の影響, さらに地盤バネの低下が座屈荷重に及ぼす影響を調べた結果, 杭頭境界条件の影響は小さいこと, 地盤の側方変位は座屈荷重にはほとんど影響を及ぼさないこと, 逆に地盤バネの低下は極めて大きな影響を及ぼすこと等が明らかになった.
  • 酒井 久和
    2001 年 2001 巻 682 号 p. 165-175
    発行日: 2001/07/21
    公開日: 2010/08/24
    ジャーナル フリー
    筆者らはこれまでに, 時間領域で基盤入射地震動を推定する手法に関して基礎的研究を進め, 基盤の観測記録から入射波成分を分離できることを確認している. 本手法を実問題に適用し, 高精度の入射波を推定するためには, 適正な地盤の震動特性の設定が必要不可欠であるが, 大自由度非線形系の震動特性を同定する手法は未だ確立されていない. 本論文では, 基盤入射地震動の推定に用いる大自由度非線形系の地盤特性値を遺伝的アルゴリズム (GA: genetic algodthms) に基づいて探索する. ここで, 応答計算に非反復時間積分法を用いて膨大な計算時間を軽減し, 実用的な手法とする. まず, 数値解析例を通じて適用性を検証する. さらに, 実問題への適用例として兵庫県南部地震のポートアイランドアレー観測記録を対象にした解析を行う.
  • 浅津 直樹, 運上 茂樹, 星隈 順一, 近藤 益央
    2001 年 2001 巻 682 号 p. 177-194
    発行日: 2001/07/21
    公開日: 2010/08/24
    ジャーナル フリー
    塑性ヒンジ領域を仮定してこの領域の変形性能を基本にしてRC橋脚の終局水平変位を評価するためには, 塑性ヒンジ長を合理的に設定することが必要である. しかしながら, 塑性ヒンジ長は, 断面高さ及びせん断支間比の他, 軸方向鉄筋径や帯鉄筋間隔等によって変化することが指摘されており, 特に軸方向鉄筋が降伏した後の挙動については十分解明されていないのが現状である. そこで本研究では, 有限変位FEM解析によって軸方向鉄筋の座屈長を算定し, 既往のRC橋脚に対する正負交番載荷実験との比較を通じて, 橋脚基部に発生する軸方向鉄筋の座屈長と塑性ヒンジ長の関係を明らかにした. さらに, 座屈解析結果を踏まえて, 材料非線形性を考慮した軸方向鉄筋の座屈長を簡易的に算定する方法を提案し, これを基に合理的な塑性ヒンジ長の算定式の提案を行った.
  • 山内 洋志, 山崎 文雄, 若松 加寿江, Khosrow T. SHABESTARI
    2001 年 2001 巻 682 号 p. 195-205
    発行日: 2001/07/21
    公開日: 2010/08/24
    ジャーナル フリー
    地震動分布を予測するためには, 震源, 伝播経路, および表層地盤の影響を考慮する必要がある. とくに広域の地震動分布を簡便に推定するには, 国土数値情報の土地分類データ等を利用して, 日本全国や特定地域の表層地盤の増幅度を推定する研究が行われている. しかしながら, これらの研究は, 最大加速度や最大速度などの指標についての増幅度を扱ったものであり, 地震動のスペクトル特性を考慮に入れたものではない. そこで本研究では, 全国の気象庁77観測点における応答スペクトルの距離減衰式における地点係数と地形・表層地質条件との関係を検討することにより, 国土数値情報から全国任意地点の応答スペクトルの増幅度を簡便に推定する手法を提案した.
  • 名取 暢, 西川 和廣, 村越 潤, 大野 崇
    2001 年 2001 巻 682 号 p. 207-224
    発行日: 2001/07/21
    公開日: 2010/08/24
    ジャーナル フリー
    既設橋梁を健全な状態に保持していくためには, 腐食に関して, その点検から補修補強に至る一連の維持管理手法を確立しておくことが重要である. 本研究では, 腐食により損傷を受けた鋼部材の補強方法として, 比較的に簡易で, かつ補強効果が高いと考えられる当板添接補強を取り上げ, その効果について実験的検討を行った. 実験では, 補強添接板の接合方法として, 高力ボルトによる摩擦接合を取り上げ, 腐食面を摩擦面とした場合の基本的なすべり性状について検討し, 腐食表面の凹凸が著しい場合には, 十分な荷重伝達がなされない場合のあることを確認した. また, そのような場合の対処方法として, 接着剤を接合面に塗布して高力ボルトを締付ける併用接合について提案し, その場合の補強効果について, 実腐食材を用いた引張試験および曲げ試験により確認した.
  • 神山 眞, 佐藤 勉, 鈴木 猛康
    2001 年 2001 巻 682 号 p. 225-243
    発行日: 2001/07/21
    公開日: 2010/08/24
    ジャーナル フリー
    不整形地盤の地震応答における短周期表面波の工学的重要性が応答シミュレーションとアレー観測による実測に基づき論ぜられる. 短周期表面波の工学的重要性は加速度などの震動の特異増幅とひずみや応力などのテンソル挙動に表れることから, これらの解析に有効な擬似スペクトル法が地震応答シミュレーション手法として用いられる. 最初に, 典型的な不整形モデル地盤の応答シミュレーションから震動増幅と地盤ひずみ挙動が短周期表面波の発生に密接に関係することが明らかにされる. 次に, アレー観測が実施されている実際の不整形地盤における地震動記録にみられる震動増幅と地盤ひずみが応答シミュレーションと比較され, 擬似スペクトル法の有効性が示されると同時に, 短周期表面波の重要性が論証される.
  • 本田 利器, 澤田 純男
    2001 年 2001 巻 682 号 p. 245-256
    発行日: 2001/07/21
    公開日: 2010/08/24
    ジャーナル フリー
    神山, 吉田は, complex envelope を用いて, 応力とひずみの時刻歴から, 剛性や減衰の時刻歴変化を算出する方法を提案し, 同手法を実観測記録に適用している.
    本論文では, 神山らが提案している手法の妥当性や適用性について, 理論的, 数値解析的に考察した. その結果, 一般的には, 同手法により正確な複素剛性は算出されないことが分かった. ただし, 剛性が高周波成分を含まず, ひずみが低周波成分を含まないという条件が満たされる場合には, 同手法により正確な剛性が算出されること, また, この条件が近似的に満たされる場合には, 同手法により剛性の近似値が得られることが明らかになった.
  • 長谷川 弘忠, 山崎 文雄, 松岡 昌志
    2001 年 2001 巻 682 号 p. 257-265
    発行日: 2001/07/21
    公開日: 2010/08/24
    ジャーナル フリー
    空撮映像から確認可能な被害情報の精度を把握することを目的に, 兵庫県南部地震による建物被害について空撮ハイビジョン映像を用いた目視判読を行った. この際, 木造, 非木造という建物構造の違いが判読結果に与える影響と, 判読者の違いが判読結果に与える影響について検討した. 結果の検証には, 建物1棟ごとの地上調査データと, この調査で撮影された被害写真を利用した. この結果, 木造建物の比較的大きな被害の有無については個人差および判読時間の影響を受けず, 概ね判読が可能であることが明らかになった. 一方, 非木造建物の場合は, 大きな被害を受けた建物であっても建物全体に変形を及ぼす倒壊あるいは傾斜が少ないことから, 木造建物と比べて空撮映像からの被害把握が困難であった.
  • 清野 純史, 土岐 憲三, 臼田 利之, 太田 裕
    2001 年 2001 巻 682 号 p. 267-278
    発行日: 2001/07/21
    公開日: 2010/08/24
    ジャーナル フリー
    現在気象庁によって公表されている計測震度は, 地震動の持つ様々な情報を1つの特性量に集約させているため, 簡潔性という利点と情報の欠落という問題点の両面を併せもっている. したがって, 地震工学・地震防災への有効利用を考える際には地震動の特性を表す他の諸指標との関係を明確にしておく必要がある. 本研究では, 特に地震被害の出始めゐ震度4以上を与える地震に注目し, 種々の物理量と計測震度との関係とともに, 計測震度の工学上の適用範囲について応答スペクトルを用いて明らかにした. その上で, 計測震度にその特性が反映されている周期よりも長い周期帯域に対して, 既に提案している「組合せ震度」を援用し, これを構造物被害や防災情報として活用することの意義について詳しく考察した.
  • 大倉 一郎, 大野 勝, 山田 靖則
    2001 年 2001 巻 682 号 p. 279-288
    発行日: 2001/07/21
    公開日: 2010/08/24
    ジャーナル フリー
    本研究は, 繰返し塑性ひずみと鋼材の破壊靭性低下の関係を明らかにすることを目的としている. 繰返し塑性ひずみを受けた鋼材の破壊靭性をシャルピーの衝撃試験で調べる. 繰返し塑性ひずみによる破壊靭性低下を単調塑性ひずみによる破壊靭性低下に関連付けるひずみとして, これまで提案された塑性スケルトンひずみと等価塑性ひずみの妥当性を明らかにした. 塑性ひずみと時効による, 応力上昇と破壊靭性低下の関係を与える. 繰返し塑性ひずみによる鋼材の破壊靭性低下を評価する手法を提案する.
  • 近田 康夫, 松島 学, 畦崎 成志
    2001 年 2001 巻 682 号 p. 289-298
    発行日: 2001/07/21
    公開日: 2010/08/24
    ジャーナル フリー
    コンクリート構造物の損傷・劣化に伴う補修は, 力学的観点からその補修時期が決定されてきた. しかし, 公共構造物の場合には, 日常その構造物を利用したり, 目にする一般住民の持つ感覚と技術的な判断との間の差が大きければ, いたずらに不安を与える一因となる. 公共構造物であるからこそ, 純粋な工学的・力学的な判断ではなく, その外観から利用者に与える心理的影響に基づく補修時期の決定が必要ではないかという命題の下に, 段階的な劣化画像に対するアンケート調査を通して検討を行った.
  • 竹宮 宏和, 里中 修平, 謝 偉平
    2001 年 2001 巻 682 号 p. 299-309
    発行日: 2001/07/21
    公開日: 2010/08/24
    ジャーナル フリー
    本研究では, 高速列車走行を想定して, 半無限地盤, 成層地盤上の軌道構造をはりでモデル化し, 高速移動載荷・加振状態でのはり―地盤系としての動的相互作用解析を行った. そして軌道はりと地表面の応答を移動速度, 地盤条件のパラメータの下で調べた. 解析手法には, フーリエ変換法を適用して波数―振動数領域解を求め, その空間―時間領域への逆変換には離散波数法と高速フーリエ・アルゴリズムをとっている.
    解析結果からは, 半無限地盤と剛基盤上の成層地盤では, 軌道振動および地盤応答が非常に異なることを指摘した. 前者にはレーリ波による共振現象があるが, 後者にはエアリー相の固有モード波との共振現象が生じる移動速度が存在する.
  • 澤田 勉, 平尾 潔, 辻原 治, 三神 厚
    2001 年 2001 巻 682 号 p. 311-322
    発行日: 2001/07/21
    公開日: 2010/08/24
    ジャーナル フリー
    本研究は, 工学的基盤での最大地動 (最大加速度, 最大速度および最大変位) の距離減衰に適合するような模擬地震動の一作成法を提案したものである. 具体的には, フーリエ振幅スペクトルと波形包絡線を与えて作成した工学的基盤での加速度波と, それを積分して得られる速度波および変位波の最大値が, 距離減衰式より求められる最大加速度, 最大速度および最大変位と整合するように, フーリエ振幅スペクトルを修正する一手法を提案し, 数値計算よりその妥当性を検証したものである. 本手法を用いると, 種々のマグニチュード, 断層距離および震源深さに対する工学的基盤での模擬地震動を比較的簡便に作成できる.
  • 野上 邦栄, 齊藤 一則, 長井 正嗣, 藤野 陽三
    2001 年 2001 巻 682 号 p. 323-334
    発行日: 2001/07/21
    公開日: 2010/08/24
    ジャーナル フリー
    我国の吊形式橋梁は, これまで経済的に余裕のある環境の下で設計・施工されてきたが, より経済的に, より合理的に建設することが要求されている. そこで, 本論文では超長大吊橋を対象に主ケーブル, ハンガー及び主塔の安全率が変形特性および耐荷力に及ぼす影響などを明らかにし, 各構成要素の初期降伏時および全体系の終局強度に着目した合理的安全率の組み合わせについて検討した. (1) 初期降伏時の荷重倍率が現行の安全率を用いた場合のそれと同等であること, (2) 終局状態までに各構成要素が初期降伏を起こしていること, (3) 吊橋全体系の終局強度は所要荷重倍率αreq=2.4を確保することの条件を基本に, 構成要素のバランスのとれた安全率として主ケーブルγC=1.8, ハンガーγH=2.2及び主塔γT=1.5の組み合わせを提案している.
  • 松井 和己, 寺田 賢二郎, 京谷 孝史, 岩熊 哲夫
    2001 年 2001 巻 682 号 p. 335-346
    発行日: 2001/07/21
    公開日: 2010/08/24
    ジャーナル フリー
    弾塑性複合材料の微視的な領域で観察されるミクロ構造の解析を通して, その巨視的な降伏曲面の同定を試みる. 均質化法に基づくマルチスケールモデリングにおいて, ミクロ構造がマクロ構造に対してある種の構成関係を与える役割を果たしているというマルチスケール構造に着目し, 巨視的な降伏曲面とその進展を評価するためのミクロ構造に対する数値実験アルゴリズムを提案する. 数値解析では, 代表的な弾塑性複合材料について巨視的な初期降伏曲面, およびその進展を例示する. 一般化収束論に基づくマルチスケール境界値問題のミクロ自己つり合い問題を基礎式とする本手法は, 弾塑性複合材料の巨視的な材料挙動の本質を評価することを可能とするものであり, 信頼性のある構成モデル構築につながるものと期待できる.
  • 杉本 博之, 首藤 諭, 後藤 晃, 渡辺 忠朋, 田村 亨
    2001 年 2001 巻 682 号 p. 347-357
    発行日: 2001/07/21
    公開日: 2010/08/24
    ジャーナル フリー
    北海道の橋梁のユーザーコストを数値化することにより, ライフサイクルコストにおけるユーザーコストの影響について調べるものである. ライフサイクルコスト低減の考え方は, 効率的な維待管理システムを作るために, 橋梁維持管理システム (BMS) に取り入れられて来るであろう. しかし, ライフサイクルコストを考える上でのユーザーコストは, 項目としてのみ挙げられ, 実際にどの程度の影響があるかについての研究は少ない. ユーザーコストはライフサイクルコストの大きな割合を占めると予測される. また, ユーザーコストは, 対象橋梁周辺の迂回路ネットワークの評価を示す一つの指標であると考えられる. ユーザーコストの定量化を試み, それを取り入れたBMS戦略の一例, および中規模のRC橋梁の耐震設計に関わるライフサイクルコストの計算例によりユーザーコストの影響の程度を検討した.
  • 大倉 一郎, 大野 勝
    2001 年 2001 巻 682 号 p. 359-371
    発行日: 2001/07/21
    公開日: 2010/08/24
    ジャーナル フリー
    兵庫県南部地震により被災した鋼橋の復旧作業の際, 軽微な損傷を受けた鋼部材は再利用された. 再利用された鋼部材の中には, 地震荷重による繰返しの塑性ひずみが導入されている可能性がある. この繰返しの塑性ひずみは, その後の通常の自動車荷重の繰返しに対する高サイクル疲労強度を低下させる恐れがある. 本研究は, 繰返しの塑性ひずみを低サイクル疲労と考え, この低サイクル疲労による損傷が高サイクル疲労強度に与える影響を調べる. 応力集中を有する丸棒試験片を用いて, 最初低サイクル疲労により試験片を損傷させ, その後高サイクル疲労試験を行う. 得られた疲労試験結果に基づいて, 繰返しの塑性ひずみを受けた鋼材のS-N関係を定式化する.
  • 山本 欣弥, 星谷 勝, 大野 春雄
    2001 年 2001 巻 682 号 p. 373-382
    発行日: 2001/07/21
    公開日: 2010/08/24
    ジャーナル フリー
    本研究は, Shannon の情報エントロピーを用いて定義された冗長性指数 (redundancy index) REを用いてライフラインの冗長性を定量的に評価し, 地震時リスクの解析に用いようとするものである. 本研究では最初に, REと, Ziha が定義した冗長性指数RZとの数学的関係を明らかにしている. 次に, ライフラインモデルの地震時リスク解析を行い, その結果, REはRZに比べ鋭敏性が高く, ライフラインの冗長性をとらえる指数として優れていることがわかった. システムの冗長性を適切なリスク評価の指標として用いることにより, 地震に対するライフラインの事前対策の評価基準として有効性の高いものとなると考える.
  • 山田 健太郎, 金 仁泰, 伊藤 健一
    2001 年 2001 巻 682 号 p. 383-390
    発行日: 2001/07/21
    公開日: 2010/08/24
    ジャーナル フリー
    実構造物の疲労照査で生じる問題の1つに, 作用応力範囲が溶接線に垂直でない場合がある. 本研究では, 作用応力に対して垂直に溶接された荷重非伝達型リブ十字すみ肉溶接継手 (θ=0°) に加え, θ=15°と30°傾けた場合の疲労試験を行い, 溶接止端からの疲労き裂の発生・進展挙動, および疲労寿命の違いを定量的に評価した. θ=0°の場合は, 溶接止端部に沿って複数点から疲労き裂が発生し, 同一面上で合体を繰り返しながら進展するのに対して, θ=15°と30゜の場合は, 疲労き裂が同一面上ではなくなり, しばらく独立に進展した後, 段差を生じて合体し, 作用応力の垂直方向へ進展する. 疲労寿命は, 斜めの角度が0°, 15°, 30°と大きくなるにしたがって長寿命になる.
  • 中島 章典, 土岐 浩之, 斉木 功
    2001 年 2001 巻 682 号 p. 391-398
    発行日: 2001/07/21
    公開日: 2010/08/24
    ジャーナル フリー
    橋梁上の車両の走行性や鉄筋コンクリート床版のひび割れ性状などの使用性能の確認の必要性から, 構造物を構成する部材の一部が非線形の復元力特性を有する車両―橋梁系振動問題を解くことが必要となってきている.
    そこで本研究では, 構造物を構成する部材の一部が非線形の復元力特性を有する車両―橋梁系振動問題のシミュレーション解法を定式化した. そして, そのシミュレーション解法を用いた, 連続合成桁橋の鉄筋コンクリート床版のひび割れやずれ止めに作用する水平せん断力の動的応答性状の解析例などを示し, そのシミュレーション解法の有用性を確認した.
  • 貝戸 清之, 阿部 雅人, 藤野 陽三
    2001 年 2001 巻 682 号 p. 399-414
    発行日: 2001/07/21
    公開日: 2010/08/24
    ジャーナル フリー
    振動特性の変化から構造物の損傷を推定する際には, 損傷による振動特性の変化と不確実性に起因するその変化との有意性を明確にしなければならない. 本研究では, 計測データから同定される振動特性を確率変動するものとして捉え, その確率分布の信頼区間を Bootstrap 法により算出し, 不確実性に起因する振動特性の変化を定量化する手法を構築した. さらに, そのときに得られる Bootstrap 分布に基づいてその変化の有意性を検定する一手法を提案した. 実際に, 免震橋の地震時における振動計測結果およびRC構造物の常時微動計測結果に対して適用し, 前者においては地震振幅の違いにより有意な振動特性の変化が生じていることを, 後者においては震度4程度の地震前後では振動特性の変化は有意なものではないことを統計的に明らかにした.
  • 三神 厚, 小長井 一男, 澤田 勉
    2001 年 2001 巻 682 号 p. 415-420
    発行日: 2001/07/21
    公開日: 2010/08/24
    ジャーナル フリー
    兵庫県南部地震では, それまであまり目立った被害が見られなかったトンネルに被害が生じた. 神戸高速鉄道大開駅もその一例で, 土被りを支える中柱が破壊したことによりトンネルが崩壊した. このような被害を免れるためには, トンネル中柱を免震化することが一つの解決策で, 大きな上載土圧を支えながら, 回転に対してのフレキシビリティーを有する免震装置を用いることで中柱に作用する地震時の応力を低減することが期待される. 本研究では, ゴムと鋼板を用いて要求性能を満足する免震装置の形態について検討した結果, ゴムを円弧状の鋼板で左右から挟み込んだ鼓状の免震装置が一つの可能な形態であることを見出した. また, この免震装置は上載荷重に対する依存性が小さいこともわかった.
  • 森地 重暉, 川名 太, 君島 信夫
    2001 年 2001 巻 682 号 p. 421-426
    発行日: 2001/07/21
    公開日: 2010/08/24
    ジャーナル フリー
    波動実験結果について, 波線理論的な考察を試みた. 剛基層上にある弾性層に Love 波を発生させる場合, ある帯域の加振振動数で明瞭な変位波形を捕捉することができる. この帯域では, 入射波に対する弾性層の変位応答が高いことが実験的にも数値解析的にも確認できる. この点に関して波線理論的な考察を試み, 幾何学的に簡単な形で定性的な裏付けを示すことができた.
  • 中島 章典, 福田 淳, 斉木 功, 岩熊 哲夫
    2001 年 2001 巻 682 号 p. 427-432
    発行日: 2001/07/21
    公開日: 2010/08/24
    ジャーナル フリー
    鋼製橋脚の弾塑性地震応答性状をファイバーモデルによって明らかにするためには, 幾何学的非線形性を考慮する必要があることが指摘されている. これに対して, 鋼材の降伏へのせん断応力の影響は一般に無視されている. 本研究では, 幾何学的非線形性および鋼材の降伏へのせん断応力の影響を考慮したはり柱部材の剛体ばねモデル解析を用いて, 鋼製橋脚の弾塑性地震応答性状を調べ, これらの影響を定量的に明らかにした. さらに, 初期たわみが鋼製橋脚の弾塑性地震応答性状に及ぼす影響についても検討した.
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