抄録
国際建設契約約款においては, 請負者は予期しない状況が生起した時, 建設契約の変更を行うためエンジニアにクレームを通告する権利を持つ. 発注者 (エンジニア) と請負者の間に和解が成立しない場合には紛争が発生する. しかし, 請負者が状況変化に関するもっとも詳細なデータを持つという情報の非対称性が存在するため, エンジニアや仲裁者の判断の誤りや交渉による和解利得を期待した紛争が発生する可能性がある. 本研究では, 紛争発生の原因となる請負者のクレーム行動に着目し, 第3者による紛争裁定の方式や費用負担ルールが紛争発生に及ぼすメカニズムをゲーム理論を用いて分析する. その結果, 第3者裁定における過誤の確率を小さくすることが紛争の効果的解決に有効であることが判明した.