抄録
導流堤を有する感潮湖湖口周辺海岸の地形変化を検討するために, 静岡県浜名湖今切口において導流堤の建設中および建設後の30年間に取得された25枚の深浅データを経験的複素固有関数法などによって解析した. その結果, 引き潮によって生じた深みが解析期間中深くなっていること, 解析期間前半では湖口両側に形成された浅瀬は岸向きに移動していたけれども解析期間後半には漂砂上手側の浅瀬の移動方向が沖向きに変化したことを明らかにした. さらに, 湖口の漂砂上手側における堆積量は時間とともに減少するにもかかわらず下手の海岸に供給される土砂量は増加していないこと, これは導流堤を通過した土砂が引き潮デルタに捕捉されたためであること, デルタに捕捉された土砂の量は1992年にほぼ平衡状態に達していたことなどを示した.