2003 年 2003 巻 741 号 p. 13-21
富栄養な閉鎖性内湾である大阪湾東部域において阪南2区人工干潟の造成が計画されている. この人工干潟の造成に先立ち, 試験的に建設された現地実験場において形態別の窒素収支を海藻や小型底生動物現存量との関係から検討した. その結果, 造成後の時間経過が少ない2000年9月には, 干潟域は周辺海域への溶存態総窒素, 懸濁態窒素, 総窒素の供給源として機能したが, 藻類が濃密に増殖した2001年9月には窒素固定の場に変化していた. また, 2001年10月の優占海藻による窒素固定量を試算すると2.51kg/dayとなり, 干潟での溶存態窒素固定量の72%に相当した. このことから, 造成後1-2年程度の人工干潟域で海藻が優占した場合, 窒素循環に及ぼす海藻群落の影響の大きいことが示唆された.