抄録
本研究では, 複雑な連鎖的意思決定構造をもつ社会基盤整備プロジェクトの財務的評価・意思決定問題を, システマティックに記述・分析できる定量的手法のための枠組を提案する. 本研究では, まず, 当該プロジェクトを複数のオプションから構成される複合 (compound) オプションと見なし, そのオプション構造を有向グラフとして表現する枠組を提案する. 次に, 現実的かつ一般的な仮定の下で複合オプション問題を定式化し, 問題の分解可能性に着目した数理解析を行う. 具体的には, この問題が, 二つの異なる座標軸―時間とグラフ構造―について分解できることを示す. こうして分解されたサブ問題が数理計画分野で良く知られる標準形の相補性問題に帰着することを明らかにする. これらの分析結果に基づき, 見通しの良い効率的数値解法を開発する.