抄録
本論文は網走湖とそれを含む流域内の水循環の長期的, 短期的挙動を知る目的で1992年以降, 約30回以上におよぶ現地観測と数値計算を用いた水理, 水文学的観点からの総合調査の成果である. 網走湖の塩水と淡水の境界の位置に決定的な影響を及ぼすのは洪水時の流入水による下層塩水の上層への押し上げ, 引出しと, 強風時に現れる青潮現象である. 融雪出水が中層密度流の形態で塩淡境界面に沿って湖内に流入する様子を超音波により可視化することにも成功した. また湖内塩分の吐き出しには, 洪水流入に伴う下層塩水の吸い上げや連行による短期的な機構と恒常的な連行により湖外へ流出する長期的な吐き出し機構の2つがあることがわかった.