抄録
本稿は,微地形レベルでみた扇状地散村集落の立地特性を明らかにすることを目指し,微地形を把握できる資料を用いて本家・神社の立地微地形と敷地構成の対応関係について考察したものである.その結果,本家は尾根筋と谷筋に同程度の割合で立地し,谷筋では谷頭部を選ぶ傾向があること,また立地微地形と敷地構成に対応関係がみられることから扇状地では谷筋・尾根筋という捉え方が有効であること,本家は水防上有利な地形に立地する傾向があり,特に周辺より低い土地ではあるが洪水の被害を受けにくい谷筋谷頭部を選択していることが扇状地散村集落における大きな特徴だと指摘した.また神社の立地地形や集落との位置関係,神社の伝説から,神社が洪水から集落を守るような位置に設けられた可能性を示唆した.