2015 年 71 巻 1 号 p. 26-36
明治期までの鴨川納涼では,今日見られるような高床納涼席が沿岸に設置されるだけでなく,中州や橋の下など川中全体に盛り場としての納涼場が形成されていた.本研究では,納涼営業に関する制度面,物理環境面に着目して伝統的な納涼場の廃止までの変遷を追い,鴨川納涼場の変質をもたらした要因について考察した.その成果は以下のとおりである:1)官有地借用制度の変更と規制の強化が行われ,2)鴨川運河工事に伴う河床掘削で出店が敬遠され,構造規制の議論も始まった.3)それと同時に納涼場は徐々に衰退し,博覧会的要素導入という再興策も講じられたものの定着しなかった.