抄録
近年, 炭素繊維強化プラスチック(CFRP:Carbon Fiber Reinforced Plastic)やオーステナイト系鋼材といった異方性材料が工学の様々な分野で利用されるようになってきた. そのため, 異方性材料中の欠陥に対する欠陥形状再構成手法の開発が求められている. そこで, 本論文では, 純面外波を用いた異方性弾性体中のき裂に対する逆散乱解析法を開発する. 逆散乱解析法の妥当性を確認するために, 異方性純面外弾性波動問題に対する基本解の遠方場近似を停留位相法を用いて求め, その精度を確認する. また, Kirchhoff近似を用いた逆散乱解析法を一般の純面外異方性弾性波動問題へ適用することを考える. 逆散乱解析に必要な散乱波形は, 従来の時間領域境界要素法の数値安定性を改善した演算子積分時間領域境界要素法(CQBEM:Convolution Quadrature BoundaryElement Method) を用いて求める. 得られた結果をフーリエ変換し, 周波数領域における散乱波形を求め, 逆散乱解析に適用する. 数値解析結果より, 本研究で提案するCQBEMを援用した逆散乱解析法が, 一方向CFRPやオーステナイト系鋼材中のき裂を精度良く再構成できることを示した.