2021 年 77 巻 2 号 p. I_105-I_116
2011 年東北地方太平洋沖地震に伴う巨大な津波により,多くの防波堤が被災した.本研究では防波堤の主な崩壊要因の一つである浸透崩壊に着目し,Lagrange 記述の解析手法である ISPH と個別要素法 DEM を用いた解析ツールを構築し,ケーソン式防波堤の捨石マウンド浸透崩壊解析を実施した.津波,捨石マウンド,ケーソンブロックを粒子で離散化し,各物体間での相互作用力を介して,ケーソンブロックの運動を含む浸透崩壊の形態の一部を定性的に再現した.また,DEM 粒子で解像できなかった小さな砕石は捨石マウンド表面から流出しやすくなる疑似的なモデル化により,浸透崩壊時の噴砂と後退侵食(Backward erosion)の挙動を表現した.従来の連続体ベースの解析手法では追跡できなかった局所的な破壊が,ケーソン式防波堤の崩壊に大きな影響を与える可能性の一端を数値解析例を通して示した.