抄録
神戸空港島埋立用の土砂源のひとつである神戸複合産業団地において,長大切土のり面が計画されていた.当のり面には過去に周辺で発生した地すべりにおいてすべり面となった神戸層群中の層状破砕帯が3層存在し,最深部のものは工学的性質が未知であった.また,地質構造の調査結果から,当のり面には複数の断層で区分された流れ盤構造をなす不安定ブロックの存在が確認された.このブロック内において,掘削に伴う応力解放によって発生する変状範囲,およびそのすべり面強度の想定が設計上の問題であった.そこで,切土の施工に先んじて試験切土を実施し,地すべり性挙動の観測を行った.この結果を基に切土による変状発生範囲とすべり面強度を想定して地すべり対策工を設計し,施工した.施工中は動態観測を行い,施工完了時点までの安定性を確認した.