抄録
わが国の切土法面の約2割はpH4.9以下の強い酸性を呈す.酸性土地盤での法面工の機能は劣化により徐々に低下する可能性があり,酸性土の工学的性質の解明,酸性地盤の対策技術,酸性残土の処理法の確立がより一層重要となる.本文では酸性土による植生工や擁壁の劣化事例を取り上げ,その状況や原因,土質特性について言及した.特にスレーキングを生じながら酸性物質を溶出する試料に着目し,試料の粒径により酸性化速度が特異に変化すること,水浸による強度低下は間隙水のpHに依らないことを示した.また,酸性残土を有効かつ安全に取り扱うために締固め・強度特性における中性化処理の効果を調べた結果,pHの増加によって最適含水比は高く最大乾燥密度は低くなり,またせん断強度は増加することを示した.