抄録
高松塚古墳は1972年3月に奈良県高市郡明日香村において発見され,石室内部に描かれた極彩色の壁画は国宝に,古墳は特別史跡に指定され,現地保存されてきた.ところが,国宝壁画がカビや細菌による生物被害,および地震による墳丘地山の亀裂や漆喰の劣化による物理的被害によって危機的状況に陥ったため,石室を解体し,壁画を温湿度管理の行き届いた環境下において修復することになった.これを受けて,2006年10月∼2007年9月にかけて古墳の発掘調査と石室解体が行われた.本論文では,発掘によって明らかとなった古墳の土構造物としての構造特性と,一連の原位置試験と室内土質試験によって得られた墳丘土の強度特性について報告する.また,締固め盛土構造物としての古墳墳丘地盤が国宝壁画の保全と被災にどのように関わっているのかについて議論する.