抄録
近年,都市基盤整備を巡る公共事業において,所定の法的手続を取っているにもかかわらず,行政・事業者の過失が訴えられるケースが相次いでいる.本研究では小田急線高架化事業取消請求事件の事例検証及び都市基盤整備を巡るコンフリクト事例の経年的整理から,コンフリクトを予防・回避するための計画プロセスを巡る手続的信頼性について検討を試みた.その結果,まず小田急線問題に象徴される環境アセス手続主体間の独立性補強措置及び第三者機関が考慮すべき課題を示唆した.さらにコンフリクトを巡る裁判の構図等を明らかにした上で,構想から事業段階までの長い計画期間を有する都市基盤整備が留意すべき公益性とリスク評価の捉え方を考察し,実体関係に基づく手続審査とソーシャルキャピタル論からの手続的信頼性の意義について再考を行った.