抄録
本研究では,事前・事後割引料金システムの経済厚生を比較する.事前割引料金システムでは,実際の交通サービスの利用に先立って,サービス対価の支払い額が確定している.一方,事後割引料金システムでは,事前に料金メニューのみが提示され,家計のサービス行動に応じて料金が事後的に決定される.このように,事前・事後割引料金システムでは家計と企業のリスク分担構造が異なる.本研究では,以上のリスク分担構造を考慮した3期間契約モデルを定式化し,事前・事後割引料金システムが企業の利潤,家計の厚生に及ぼす影響を理論的に分析する.その結果,既存の料金システムを併存しつつ,新しく割引料金システムを導入する場合,事後割引料金システムの方が社会的厚生の観点から望ましい結果をもたらすことが明らかになった.