2009 年 65 巻 3 号 p. 229-243
明治初期の野蒜港(宮城県)建設に関係する遺構から採取された,セメントと思われる硬化物の化学的性状を評価した.化学組成分析,構成鉱物の同定および観察の結果から,硬化物はセメントと砂を用いたモルタルであることが明らかにされた.モルタルに含まれる未水和セメントの化学組成,粒子の大きさ,鉱物の種類,量および存在状態を,化学分析および電子線マイクロアナライザーにより評価した.その結果は,文書記録に残る明治初期のセメントの性状と符合するものであり,当時製造されたセメントが使用された可能性が示唆された.