抄録
全国規模で生じている普通の地域の景観の劣化に対応するには,地域景観と地域社会の表裏一体の関係を地域住民が自ら明確に理解し,地域景観とローカル・ガバナンスを補完的に再構築していく理論が希求されている.本研究では,地域景観の構成要素と社会的活動諸相との関係を,旧開田村を対象として実証的に分析し,その相関構造と基本形成単位を抽出した.次に,相関構造に起因して地域景観に内的システムが生成することを示した.その上で,内的システムが発現(再現実化・再社会化)する際に生じる新たな地域社会の枠組みを模索する実体的な問いが,地域景観の再生とわが国の自治の本質的な課題である自己統治的ローカル・ガバナンスの再構築に連動し得る点に関して,その論理的枠組みを明らかにした.