2007 年 63 巻 1 号 p. 14-26
普通・早強・低熱ポルトランドセメント,ならびに高炉スラグ微粉末とポゾランを混和材として用いて作製したモルタル供試体をNaCl溶液に浸漬させ,セメント硬化体の塩素固定化特性の定量化を試みた.具体的には,細孔溶液抽出試験と湿式分析法による塩化物イオンと全塩素の測定,XRDを用いた独自の手法によるフリーデル氏塩の定量,および水銀圧入法による細孔分布の測定を行った.以上の試験に基づき,塩化物イオンと固定化塩素の平衡関係を議論するとともに,固定化塩素をさらにフリーデル氏塩としての固相塩素と空隙壁面への吸着成分に分離し,各々の寄与分について定量的に論じた.結合材の種類によって固相塩素の量が大きく異なること,また形成される細孔構造の粗密と生成水和物の特性の両者によって,吸着塩素の量が支配されることを明らかにした.