抄録
本論文は,自然電位法による鉄筋腐食診断の信頼性を低下させている各種要因の影響を再検討し,塩害環境下にあるコンクリート構造物への自然電位法の適用方法を検討したものである.供試体実験により測定時の気象条件とマクロセル腐食が自然電位に及ぼす影響を明らかにし,これを実際に塩害環境下で供用中のコンリート構造物の測定を通じて検証した.また,鉄筋腐食による劣化損傷が顕在化していない構造物に自然電位法を適用する際には,自然電位の測定値のみから鉄筋の腐食状態を推定するのではなく,等電位線図などを用いて比較的卑な自然電位が得られた位置を特定することにより,塩化物イオン濃度の高い箇所や局所的な腐食箇所を検出できることを示した.