抄録
技術者が重視すべき価値を明確化を共有することにより,個々の技術者は責任ある意思決定と行動ができる.技術者倫理を確立するために,技術専門職集団は,技術に携わる者が重視すべき「価値」群とその優先順位を明確にし,集団の構成員ならびに,その意思決定によって影響を受けるステイクホルダーとの間で共有する包括的な施策,すなわち「価値共有型倫理プログラム」を構築・運用する必要である.その倫理プログラムの中核をなすのが,技術者倫理教育である.
本稿では,この基本認識について解説するとともに,具体的な実践例として,金沢工業大学における教育課程を通した倫理教育を紹介する.加えて,土木学会をはじめとする技術専門職集団としての技術系学協会が,構築・運用すべき倫理プログラムの在り方および構成要素を具体的に検討する.