2014 年 70 巻 2 号 p. 213-225
作業者が土砂に生き埋めとなる労働災害は後を絶たないが,この災害は主に二つの要因が重なって発生していると考えられる.一つは斜面が崩れて土砂が落下したことであるが,もう一つは作業者がその予兆に気づかず逃げ遅れたことである.本研究では簡易な計測による崩壊予兆の把握を目的に,斜面の浅い部分のせん断ひずみθと崩壊危険性の関係を調査した.関東ロームを用いた大型模型実験の結果,θは変位と関連を持って増加していることが明らかとなり,その増加にはクリープ的傾向が見られた.さらに,数値解析して崩壊部周辺の変形を調べたところ,実験と同様な浅い部分での増加が確認された.以上より,本研究では工事中の斜面においてθを計測してそのクリープ的増加の発生を検知することは,現場での崩壊監視を補助する上で有効なことがわかった.