土木学会論文集C(地圏工学)
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和文論文
  • 小玉 齊明, 藤井 義明, 菅原 隆之, 宮下 尚志
    2022 年 78 巻 4 号 p. 277-286
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/10/20
    ジャーナル フリー

     岩盤の割れ目に樹木や樹木根が侵入する場合,その成長に伴って割れ目が徐々に拡大して不安定な岩塊が生まれ,やがてこれが落石となることがある.この割れ目の拡大がどのようなタイミングで生じるかを観察するため,北海道函館市内の岩盤斜面にてハリエンジュが侵入する割れ目の変位を3年6ヵ月にわたり計測した.データに含まれる変位計と岩盤の周期的な熱変形を補正した結果,樹木の成長期にあたる5月上旬から8月中旬にかけて明瞭な開口変位が確認できた.さらに,細かい変位に対して気候条件などとの比較を行った結果,温度の影響が強い樹木の肥大成長に加えて,地震,遮るものがない方向からの風,降雨の際に割れ目が僅かに開く傾向がみられた.これらは樹木の成長により不安定になったブロックから生じる浮石型落石の誘因となり得る.

  • 篠田 昌弘
    2022 年 78 巻 4 号 p. 287-305
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/10/20
    ジャーナル フリー

     本研究では,性能規定された鉄道盛土を対象に,一般に公開されている全国の地震ハザード情報と新たに構築した鉄道盛土のフラジリティ曲線推定式を用いて,鉄道盛土の地震時被災確率算定方法を提案した.鉄道盛土のフラジリティ曲線を累積対数正規分布と仮定して,ニューマーク法を用いた地震時残留変位解析を準モンテカルロ法により多数回実施して,累積対数正規分布の母数推定式を提案することにより,簡易で実務的なフラジリティ曲線推定式を作成した.提案法を用いて,鉄道盛土の全国被災確率マップを作成して,鉄道盛土の耐震性能を確率論的に評価した.

  • 中島 昇, 中根 久幸, 原 忠
    2022 年 78 巻 4 号 p. 306-320
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/10/20
    ジャーナル フリー

     大雨に伴う土砂災害には,急勾配の斜面で生じる0次谷の土砂流出が含まれ,近年その対応を検討する上で土砂流出リスクの適切な評価方法の確立が課題とされている.本研究では,平成30年7月豪雨で被災した基盤地質が異なる3地区を対象に,現地調査と地形判読から,0次谷の地形・地質的特徴と土砂流出の関係,基盤地質の違いが0次谷の土砂流出に与える影響を検討した.その結果,0次谷で生じる土砂流出は,谷の発達と密接な関係にあり,基盤地質や地盤材料によらず,貫入抵抗値Ndが20以下の緩い土砂層が層厚1.1m以上で分布する場合にのみ,土砂流出が発生する可能性が高いことがわかった.また,土砂流出の危険性が高い0次谷は,谷の発達に伴い大きくなる最大b/a比や谷全長を用いて抽出できることを示した.

  • 佐丸 雄治, 宇梶 伸, 別府 正顕, 杉山 好司
    2022 年 78 巻 4 号 p. 321-340
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/10/20
    ジャーナル フリー

     斜面のり枠工は豪雨・地震災害の頻発する我が国で斜面防災を担う不可欠な技術の一つである.従来ののり枠工では低スランプモルタルをエア搬送していたが使用骨材の分離などによって強度不足となり易いため,一般土木工事と同じくコンクリートポンプにより圧送し輸送管先端でエア吹込みする施工方式を開発した.これにより高スランプ材料が材料分離を起こさず長距離・高所までポンプ圧送したのち,エア吹込みによりスランプの低下を図りながら急斜面上の型枠にも材料分離,流動,ダレなどを起こすことなく打設できることを示した.そのために重要なエア吹込み打設時の水分飛散現象に着目し打設後のスランプの適切な管理法を設けると共に,セピオライトを添加することで打設後のモルタルに分離抵抗性とダレ抵抗性を付加しのり枠工の高品質化を図った.

  • 金澤 秀太, 山田 正太郎, 京谷 孝史
    2022 年 78 巻 4 号 p. 341-354
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/10/20
    ジャーナル フリー

     岩盤の上昇によってその上部地層に現れる「変状地層」について,上部地層の「速度依存変形特性」と下部岩盤による「強制変位速度」の組み合わせが,どのような条件を満たせばそれが形成されるのかを数値解析によって検討した.上部地層については,その速度依存性を一般化Maxwellモデルによって表現するとともに,地層中の潜在的不連続面を摩擦接触構成則を実装した拡張有限要素法(X-FEM)によって表現した.下部岩盤の押し上げ速度に応じて,上部地層は潜在的不連続面に沿ってせん断破壊するのか,それとも粘弾性変形が卓越するのかを照査した.その結果,地層厚の2分の1相当の強制変位を与えるのに,Maxwellモデルの緩和時間よりも一桁以上大きな時間を掛けなければ変状地層は実現しない可能性が大きいとの知見を得た.

  • 杉井 良平, 芥川 真一, 松村 匡樹
    2022 年 78 巻 4 号 p. 355-368
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/12/20
    ジャーナル フリー

     本研究はプラスチック光ファイバーによって作製した水分検知センサー(RRセンサー)が計測する光強度と,土壌水分計が計測する体積含水率の関係を明らかにすることを目的としている.スマートフォンなどの携帯端末用の光情報処理アプリケーションと土層カラムを用い,一定の散水強度で散水実験を行った結果,地盤への水分の浸透,疑似飽和状態から飽和状態への進展が光強度を計測することで概ね把握できる可能性が示された.また,体積含水率の増加に伴う光強度の変動速度は,疑似飽和状態を超過する付近から増大することが明らかになった.この結果はRRセンサーによる地盤中の光強度の計測結果を斜面の危険度評価に活用可能であることを示唆する.

和文報告
  • 奥 要治, 土橋 浩, 堀地 紀行, 長屋 淳一, 張 升翼, 小泉 淳
    2022 年 78 巻 4 号 p. 261-276
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/10/20
    ジャーナル フリー

     地下約40mの硬質地盤中に建設された外径約3.2mの既設シールドトンネルに,新たに外径約13.1mの2本の大断面シールドが上下に併設して近接施工された.光ファイバー方式で計測された既設トンネルの内空変位とFEM解析の結果を比較し,既設トンネルに与える近接の上下併設シールド施工の影響を考察した.また,シールド重量を考慮した一連の施工時荷重を,2次元弾性FEMに逐次入力し検証した結果,既設トンネルの内空変位の計測結果と解析結果は良好な整合性を示した.本研究では,計測結果から得られた知見について述べ,併せてシールド重量を考慮した上下併設シールド施工時の影響予測解析手法を提示した.

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