抄録
地球温暖化によって水災害の発生や水資源が変化する可能性のある流域を検出することを目的とし,日本列島全域を対象とする分布型流出モデルを構築して,将来の河川流量の変化を分析した.流出計算の入力に用いたデータは,気象庁気象研究所の全球20km格子大気モデル(MRI-AM20km)によって計算された現在気候実験(1979-2003年),近未来気候実験(2015-2039年),21世紀末気候実験(2075-2099年)の気候推計情報である.主要な分析結果として以下を得た.1)時間最大流量,日渇水流量,月平均流量のそれぞれについて,明瞭な変化が見られる流域が存在した.2)上記の変化は日本列島全域で一様に現れるのではなく,大きな地域性が見られた.3)近未来気候実験で上記の変化が見られ,21世紀末気候実験では一層その変化が明瞭となる傾向にあった.