2019 年 75 巻 2 号 p. I_1351-I_1356
梯川流域を対象とした氾濫シミュレーションによる浸水深と氾濫流速を用いてリスクランクの評価を実施した.リスクランクの算出過程では各時刻の状態量を評価しており,時間ごとの避難困難度を求めることができることから,避難判断水位に達した時刻からの避難可能時間を算定した.リスクランクは,その最大値をもって定義されるため,洪水の時間変化の影響を受けないが,避難困難度は浸水状況の時間変化に影響を受ける.本研究では,必ずしもリスクランクが高くない洪水波形において避難に余裕がないとの結果を得た.破堤氾濫が想定される大規模水害では避難行動は減災のための重要な行動であり,最も深刻な浸水状況に基づくリスクランクと合わせて,様々な降雨波形に応じた避難可能時間を算定し,避難完了までの時間を示すことが重要かつ有効である.