2019 年 75 巻 2 号 p. I_529-I_534
これまでアユの産卵床の調査方法は一般に,潜水による着卵礫の目視確認であり,得られる結果は経験や技量に加えて調査時間や労力に依存する.そのため,河床環境が悪化した河川や,大河川および急流河川で産卵の可能性を検討する際には必ずしも十分な方法とは言えない.本研究では樹林化で河床撹乱が低減しつつある旭川下流部の3地区の瀬においてアユの産卵可能性を検討することを目的に,秋期のアユの河川降下に合わせて,昼夜間の環境DNAの変化と産卵行動および瀬の水理特性との関係を調査した.
その結果,水理特性値が空間平均的に産卵に適した条件の瀬では着卵礫が観察され,また昼夜間で比較すると環境DNA濃度は夜間に急増することが分かった.さらに,着卵礫が観察されず,特性値が空間平均的には産卵に適さない条件の瀬であっても昼から夜にかけて環境DNA濃度は増加することがあり,そこからアユが部分的に好条件の河床を探し出して産卵する可能性が推察された.