2022 年 78 巻 2 号 p. I_451-I_456
まちづくりなどの総合的な防災・減災対策に向け,中小河川を含めた全国で多段階の浸水想定が必要とされる.d4PDFは観測降雨の少ない地域も含め,小さな引伸ばしで種々の降雨が得られるため,そうした浸水想定への活用が期待できる.しかし,多数のd4PDFアンサンブルで個別河川ごとに降雨規模を定義し,流出・氾濫解析を行うことは容易でない.本研究は現実的なコストによる全国の多段階浸水想定に向け,d4PDFの限られたイベントから地域の複数河川で共用可能な降雨データを作成し,これによって特定流域の流量を表現する手法を検討した.結果,最大30程度の地域共通の降雨データを用いて流出解析を行えば,得られた流量の中央値または上位の値をとることで,複数地点・複数規模の流量を10%程度の誤差で表現できることが分かった.